テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


「ひゃっ!!」


私は思わず、いくまるを半ば突き飛ばすようにして離れた。
じわじわと目に涙がこみ上げてくる。


「な、何するの」


力なく、涙声で言った私の言葉は、静かな廊下によく響いた。


「いいよ、別に好きにならなくても。今は。」


いくまるは顔を上げると、私を見つめた。


「俺が絶対、紘那を振り向かせる。…あんなやつにとられてたまるか。」


いくまるはそれだけ言い残すと、その場から逃げるようにして立ち去った。

最悪。

袖で自分の口を拭う。
私は澪君の彼女なのに。

避けられなかった自分もムカつく。

涙が一筋、私の頬を流れていった。
それを筆頭に、涙は次々と零れ落ちる。

すんすんと鼻をすすりながら私は廊下を歩いた。