テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


私はそっと、自分の頭に手を伸ばす。
澪君…意外と大胆…。
思い出すとまた顔が赤くなるから、私はぶんぶんと首を振って、2人とは逆方向に向かって歩き出した。
そろそろ仕事に戻らなくちゃ。


カタ


微かに聞こえた物音に、私は足を止めた。
廊下の曲がり角。
誰かのつま先が見える。

いつからいたんだろう?
ここからだったらあの階段の踊り場が見える。
私が澪君と一緒にいたのも丸分かりだろう。
血の気が引いていくのを私は感じた。
こめかみに冷や汗が流れる。


「だ、誰…ですか」


震える声でやっと一言そう言った。
やがて、廊下の角に隠れていた人物は、ゆっくりと私の前に姿を現した。



………いくまる。



彼は黙ったまま、私をじっと見つめている。


「ご、ごめん…私、ちゃんと返事してなくて。その…私はいくまるのこと、好きにはなれなっ」


突然塞がれた口。
その感触は柔らかく、そして温かかった。
いくまるの顔がすぐそこにある。
私はすぐにはこの状況が理解できなかった。