「無理してないよっ」
澪君は薄い唇の端を上げる。
「してるじゃん。私が早く会いたいって言ったから来てくれたんでしょ?」
2人並んで階段に座る。
私は澪君の靴をぼんやりと眺めた。
「まぁ、それもある」
澪君は足をぐーっと真っ直ぐに伸ばした。
細くて長い、綺麗な足。
「でも、俺が会いたくてしかたなかったから来たんだよ。そうじゃなきゃ、ここまで来ませーん!!」
澪君はころころと笑いながら私を覗き込んだ。
「気にしなくていいから。俺、ちゃんと自分のことも、紘那ちゃんのことも考えてるからね」
そう言って彼は、私の髪にそっとキスを落とし、立ち上がった。
真っ赤になってしまった私は両手で顔を隠す。
ちょうど、パタパタと廊下を走る音が聞こえた。

