テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


「俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」


春翔君は階段から立ち上がると、楽しそうにその場から離れていった。
1人で大丈夫かなぁ…。


「あいつ、気遣ったな。」


澪君がぽつりと呟いた。


「え?」


澪君は顔をくしゃくしゃにして笑うと、「なんでもない!」と言って私を抱きしめた。
懐かしい匂いと体温が、私を包み込んでいく。
澪君に抱きしめられると、なぜか優しい気持ちになる。
澪君の優しさが、私に流れ込んでくるからかな。


「なんか、自分のこと抱きしめてるみたい」


私から離れると、澪君はそう言った。
「変な感じがする」と私の衣装を指で遊び始める。


「無理しちゃダメだよ」


私はそんな澪君を見つめながら呟いた。
2人とも、一丁前のアイドルなんだから、バレたり、騒ぎになったりしたらまずいはず。
澪君が無理をして私に会いにくることなんて、私は望んでいない。