「それ、澪ちゃんがこの前のコンサートで着てた衣装やない?
いやー、紘那ちゃんは裁縫のセンスもあるんやな!!
これ作るの、大変やったろ?」
私の案内で、人気の少ない場所に向かいながら春翔君はまじまじと私の格好を見つめる。
「そうですけど…
春翔君は声も大きくて関西弁が目立ちます!
ボリュームダウンで!」
私がこそこそと囁くと、春翔君は「あーあ、怒られてもうたわ」としょんぼり肩を落とした。
澪君は、そんな春翔君をよしよしと撫でながら私の後に続いた。
例の特別棟の階段の踊り場で、私たちはお喋りをすることになった。
「何か食べた?」
「んー、チョコバナナ食べた!」
「あとポテトも」
私の質問に嬉々として答える2人は、なんだか子供みたいで可愛い。
「俺ら、気付いた時にはShootingやったから、満足に文化祭楽しんだことなくて…。
今日はなんか学生の気分でめっちゃ楽しい!」
春翔君はこの前会ったときよりもキラキラと輝いている気がした。
茶色がかった瞳が嬉しそうに揺れている。
そうだよね、アイドルには普通の生活は保障されていないもんね…。

