テレビの向こうの君に愛を叫ぶ


「澪君!!」と大声で呼び歩くわけにもいかなかった私は、とうとう携帯に頼ろうとポケットに手を入れた。

画面を開いたその瞬間、新着メッセージで携帯が振動した。


『紘那見っけ』


え?


くるくると辺りを見回して、澪君の姿を探す。
アイドルの2人は、うまく人混みに身を隠しているらしく、なかなか見つからない。
私はその中でも、一際背の高い男の人2人組を見つけた。
懐かしい黒のハットと、初めて見る白のキャップ。
2人は私に手を振り、それから手招きをした。

私は近くにいたクラスメイトに、「ごめん、これ頼んだ!」と言って、風船の束を渡すと、澪君たちのところへ走っていった。


「久しぶりやね」
「来ちゃった」


澪君と春翔君はほぼ同時に言った。
2人とも相変わらずの姿に、私はとてつもない安心感を覚える。


「来ちゃった…って、何人かにバレてるよ?
まだ騒ぎにはなってないけど」


私は周りを気にしながら2人を見た。
2人は驚いた顔をして笑い出す。


「まじ!?俺まだ気づかれてへんと思うてたわ」


春翔君がけたけたと笑う横で、澪君も「俺らオーラ消してたもんな」と言って笑みをこぼす。


「本当は、悠も蒼も来たがってたんだけど、2人とも仕事でさ」


「それで、暇人の俺たち2人で遊びに行こうって話になったわけや!」


寒そうに黒のチェスターコートのポケットに手を入れて、私を見つめる澪君に、私はまたドキドキが止まらない。