そんなの、分かってるよ。
でも、でもね、私は澪君が大好きなんだ。
もし仮に、紗乃が言った通りになってしまったとしたら、私は壊れてしまうかもしれない。
少なくとも、再び澪君のファンには戻れないだろう。
それでも私は、あの日の澪君の言葉と気持ちを信じたい。
だめかもって思ったら、その時は、自分が壊れる前にそっと離れればいい。
「だったら、私は応援できない。
私は紘那に笑っててほしいから」
紗乃はなんでもはっきりと言う。
そこがあの子の長所であり、短所でもある。
本人もそう言っていた。
「うん」
私が頷くと、紗乃は、「さぁ、サボってたら委員長に怒られるよ!戻ろう!」と無駄に元気よく私の手を引いた。
歩き出すと、さっきまで忘れていた寒さが身に染みた。
紗乃の手は温かかった。

