「美味しかったよ、ごちそうさまでした」
私はキッチンで食器を洗う澪君の耳に囁いた。
ふわふわの白い泡が食器の上を漂っている。
リビングからはじゃれ合うShootingの姿が見えた。幸せ過ぎる空間に私は目を細めた。
ジャーッと水の流れる音が鳴り続ける。
視線を感じて、私は隣で皿を洗う澪君を見上げた。
澪君は、苦しげな表情で私を見つめていた。
潤んだ瞳は私の姿を捉えて離さない。
鼻筋の通った鼻をすんっと鳴らした澪君は、そのまま私に近づいてくる。
「澪君?どうしたの?」
澪君は私の問いに答えることなく、さらにぐっと近づく。
残り10センチのところで私はドキドキが止まらずに、逃げ出そうとした。
澪君の長い腕は、そんな私を捕まえるようにして、私の背中で組まれる。
緊張のあまりに、もう声も出ない。
次の瞬間、唇に何か温かいものを感じた。
私は眼を大きく見開く。
視界には澪君がいっぱいに映っていた。
触れるだけですぐに離れてしまった唇。
それから澪君はくしゃりと私の頭を撫でる。

