水が勢いよく流れる音が、ドアの外にも聞こえる。

新伊は、また手を洗っていた。

繰り返し、繰り返し。



うつむく新伊から涙がこぼれたように見えたのは、きっと気のせいだ。

そう、思いたかった。




オレはそんな新伊をじっと見ながらポケットの中に手を突っ込んだ。

すると、ティッシュと何かもう一つ入っていることに気づく。

試供品のハンドクリーム。

そうだ、今朝配っていたのをもらってポケットにつっこんだままだった。


そのハンドクリームをコーヒー色に染まったのカバンの上に置き、オレはそこから玄関に向かって歩き出した。