セロリとアライグマ

新伊はカバンに触れた自分の手をじっと見た。

そして突然、右手を左手で覆い、ダッシュで教室のドアに向かって走る。

教室のドアを勢いよく開け、廊下を走っていった。



この前と同じである。

おそらく新伊は今頃トイレで手を洗っている。


なぜだ。



外に落ちていたゴミに触れた手と、今井が自分のノートを破って捨てたゴミに触れた手と、コーヒーのしみのついたカバンに触れた手。



あいつにとっての汚れのレベルって何?

何が基準だ?


オレはバイトに行くのも忘れ、誰もいない教室でしばらく自分の席に座っていた。

座ってじっとコーヒーのかかったカバンを見つめ、新伊が手を洗う理由を考えていた。





15分ぐらいたっただろうか。

ガラガラと教室のドアが開く音がする。

新伊だった。

少し安堵の表情を浮かべた新伊。

「…ごめんね、山崎くん。驚かせちゃったかな」


「いや、それよりもさ…お前って…」

オレは一瞬迷った。

彼女に真実を問い、今オレの目の前の疑問を解決するべきか。

それとも彼女と関わらないよう、そのまま無視してこの場を離れるべきか。