☆幽霊の足音

うぶめ「ううっ、私の…こども…」

☆歩く音

三嶋大和「この社まで来たら大丈夫だろ…美咲はここでやす…なんだ、あの光」

空島美咲「きゃああっ、大和!気味が悪いわ!あそこ女の人が立ってる」

三嶋大和「後ろにさがってろ」

うぶめ「うううぁぁぁっ、こども…や…ま…と」

三嶋大和「…え…嘘だろ…かぁさん?」

うぶめ(三嶋早苗)「うあああっ、大和…私のかわいい大和…ごめんなさい…どこにいるの?」

三嶋大和「かあさん?…美咲ここで待っててくれないか?」

空島美咲「う、うん…本当に大和のお母さんなの?あの地震で亡くなった…」

三嶋大和「あぁ、俺は顔をほとんど知らない…名前しか知らない…写真でしか見たことがない…でも、なんとなく母さんだってわかる」

うぶめ(三嶋早苗)「やま…と…」

☆歩く音

三嶋大和「あの、三嶋早苗さんですか?」

うぶめ(三嶋早苗)「うううっ…あっあああ」

三嶋大和「俺の母さんですか?大和です」

うぶめ(三嶋早苗)「うあああああっ…やま…と…」

三嶋大和「うっ、このにおいは」

空島美咲「大和!危ないわ!これは異臭よ、大和!取り込まれてしまう前にこっちに来て!!」

三嶋大和「ごほっ、ごほっ、母さんは俺を死の世界に連れて行こうとしているのか?」

うぶめ(三嶋早苗)「やま…と、おいで、一人にさせて…ごめんなさい…やま…と」

三嶋大和「母さん!俺は、もう一人じゃない。あの時確かに俺は地震で…津波で家族をすべて失った…でも、俺はもう一人じゃないよ。母さんがあの時必死で俺の命を守ってくれたから…ほらこれ…(ガサッ)」

うぶめ(三嶋早苗)「やま…と…ひと…りじゃない…」

三嶋大和「そうだよ、俺は母さんが必死に、おなかの中にいる俺を守ってくれたから。救助されたときすぐに俺を産んでくれたんだよな。そのあとすぐに息を引き取ったって病院の人が教えてくれた…そしてこの紙を貰ったんだ…「君死にたまふこと勿れ」あなたに死んでほしくないって意味だろ?」

うぶめ(三嶋早苗)「やま…と」

三嶋大和「母さんのおかげで俺は生きてる。大切な信頼できる親友もできた。大切な愛せる彼女もできた。俺は今すごく幸せだよ。母さん…だから、もう、俺を待ってなくていいんだよ」(涙ぐみながら)

うぶめ(三嶋早苗)「やま…と、うああああああっ」

☆水の音

三嶋早苗「やまと、やまと、私の大切な息子。いつ生まれるのかしら。こんなにお腹を蹴るんだもの。きっとやんちゃな子なのね」

☆懐かしい音楽(切ない)

三嶋早苗「やまと、あなたはきっと強くて、お父さんに似て賢い子になるわ。私はわかるの、愛してるわやまと」

三嶋大和「母さんの記憶…父さんは、すでにこのときもういない…母さんは一人で俺を育てようとしたんだ」

☆地震の音

三嶋早苗「きゃああああっ、だめよ。やまとは生まれてくるの…私が、この子を守らなくちゃ…やまと、お母さん、あなたのこと守るからね、ちゃんと生きて生まれてくるのよ」

三嶋大和「母さん…うっ…母さん、かあさん!!」

☆爆発音

空島美咲「大和!!!しっかりして!!」

三嶋大和「美咲…っ、母さんは!?」

空島美咲「あそこ…」

三嶋早苗「大和、もうあなたは大丈夫なのね…母さん安心したわ。一緒に居られなくてごめんなさいね…あなたに教えたいことがたくさんあったのに…わたし…」

三嶋大和「母さん…俺は母さんから大切なものを授かったから大丈夫だよ。母さん、俺を産んでくれてありがとう。この世界に俺は生きてこれて本当に今幸せだと思ってるよ」

三嶋早苗「大和…っ、ありがとう。私は親孝行な息子をもてて幸せだわ。美咲さん、大和をお願いします」(すぅぅっと消えていく声で)

空島美咲「はいっ!」

三嶋大和「ありがとう、母さん。おやすみ」

☆哀しい暖かいBGM