でも、伝えたい、これだけは――。



「でも、僕は、パパが居なくなっても、お母さんを助けることも支えることも出来なかった。

パパのことで話したいことあっても、お母さん、パパのことになると泣いちゃうから、言えなくて……。

パパとの二人だけの約束を守るためには、努力するしかなかった。

だから、運動も勉強もお手伝いも、全部頑張って、そしたら、お母さん、笑顔になってくれた。


パパとの約束守れてるはずだった。


でも、最近はうまくいかなくて、どうしたらいいか、考えて考えて――。

今までやって来たことも全部やって、わがままも、甘えたいのも我慢して、心配かけないようにたくさん頑張って……」



まだ、言いたいことがあるのに、視界がボヤけて、声も震えて、話せなくなった。



「知衛」



頭を撫でられた。



「知衛、もう、分かったから、十分伝わってるよ」


「頑張ってたんだよ。
でも、強くなれなかった。
寝れなくなって、食べたくもなくなって、体も重かった。

でも、それでも、心配かけたら駄目だと思って、努力してたんだよ。

でも、うまくいかない。

それに、ちょっとしたことで気を引こうとして、テストで悪い点数とって困らせようとしたから、お母さん、怒ったんでしょ。

もっと、もっと、努力しないといけないのに、甘えたから、仕方ないよね。

全部、僕が悪い子だから、いけないんだ。


笑顔にも出来ない僕は、パパとの約束守れない僕は、いらないでしょ」



こんな僕を必要としてくる人は居ない

けど、僕は必要なんだ。

パパとの約束を守れるのは、もう、僕しか居ないから――。



「知衛が、いらないわけないでしょ。
それに、良い子で、頼もしくて、私の自慢の子よ。

まぁ、私も、そんな知衛だから、大丈夫と思って、蔑ろにしてたのかも知れない。

知衛をこんなに追い詰めたのは、私だったのね」


お母さんをまた、悲しませてしまった。

でも、もう、隠しきれない。



「知衛、もう、お母さんに対して、我慢も努力もしなくても良いんだよ。

甘えたいなら、甘えて良い。
言いたいことは、たくさん言っても良い。
パパのことも話して良い。

もう、何も、我慢すること無いんだよ」



その言葉を言われた瞬間

涙が一気に流れ出した。



どうしてなのか、分からないけど、涙は止まらなかった。

そんなとき、お母さんに抱き締められて、僕もお母さんのことを抱き締め返した。