【仁side】







「───真、今 何て言った?」

「1度で理解しろと初めに言っただろう。……まぁ仕方ない、内容が内容か。」








───『あれ』から




華があの森を訪れた『あの日』から、
すでに1週間が経った。





華は、あれから外には出ていない。


俺の森へ来た あの日から。






そして



それと同時に、あの娘の情報が
パッタリと途絶えた。







───これが意図すること、それは





『あれ』から

吟がまた 何かを仕掛けたということだ。








(………まだ、か。)







だが そんな中でも


華が『まだ人間であること』だけは
唯一把握できていた。




『匂い』が、まだ消えていない。






しかし

直に狐へ変化すると言われて
もう1週間以上が過ぎた。



……もう、姿がいつ変わってもおかしくはないだろう。








「──華を 人間界へ戻す方法がある。」








そんな時だった。




───真が、俺を呼んだのは。








白妖狐である真が

『人間の娘について話がある』と

急な招集を求めた。





そして



あいつは俺へ
確かにそう告げたのだ。









「…それは、人間のままってことか?」

「そうだ。
幸い、まだ華は完全に覚醒していない。
今なら…人間のままで帰せる。」








俺の言葉に
真が目を伏せながら そう答える。



そして奴は切れ長の目を薄く開いて

スッ──と、視線を横へ流した。









「……全ては、吟の過ちが招いたこと。
同意なく『あの術』をかけることは許してはならないことだ。」








例え 『この世』で違反でなくとも──。




真はそう呟くと

こちらへ視線を戻して
静かに 俺に告げる。








「一時的なものだが、華の覚醒を止める術をかけておいた。
しかし──この1ヶ月が限度だ。」

「……1ヶ月、か。」

「術が解ければ──おそらくすぐに、覚醒が始まる。
そうなればもう…どうにも出来ない。」








目を少々伏せながら

真はそう重々しく言葉を口にした。






それは
この1ヶ月が──最初で最後のチャンスだということだ。