【吟side】







華を置いて椋と部屋を出ると

俺は廊下を真っ直ぐ進んで
"四神"が集まっているという大広間へと足を運んだ。





───四神(しじん)。


その名の通り4人の神のこと。

こちら側の世界には俺を含めた5人の神
『五大神(ごだいしん)』が存在する。



この妖の世界をまとめ統率する役割を
この5人で分けてやっているのだ。







「こんなすぐに召集するなんて、どうせ狼達の仕業でしょ。あいつら鼻が効くからねぇ。」

「…おっしゃる通り、皆様に伝達をかけたのは仁(じん)様でございます。」







俺の言葉に 椋が頷いて答える。





───仁。

五大神の1人である狼を率いる長で

その嗅覚を生かして 地上で警察のような役割を果たしている集団をまとめる男。




五大神が召集されるのは

大体がこの狼の声かけか、
鴉の声かけのどちらかだ。








「──こちらで、皆様がお待ちです。」








そう言って、椋が大広間の襖をゆっくりと開ける。


すると中で4人がすでに待ち構えていて、半分に分かれ対面する形で座っていた。




襖の開く音で 4人がこちらを見る。








「───来たか、吟。」






仁は胡座をかきながら 腕を組んで
鋭い視線をこちらに向ける。


俺が薄っすら口角を上げながら

4人の座る中に近づくと、
冷やかな口調で 仁に率直に聞かれた。







「…お前、人間を連れてきただろう。」







その声に 他の3人も黙ってこちらを見る。


俺が静かに座って
4人に視線を向ければ、

仁は眉間のシワを深くした。







「…まぁね。お前の言う通り、人間を1人連れてきた。」

「テメェ…平然と言ってるが、それがどういうことか分かってんだろうな?」







俺の言葉に仁が怒った声色で
こちらにそう尋ねてくる。





どういうことか、ねぇ…。








「別に、何の用もなく気分で連れてきたわけじゃない。」

「あぁ?」

「…あの子は、俺の花嫁になる子だよ。」






そう告げると


それまで黙って話を聞いていた周りが
大きく目を見開いて、ザワつき始める。




仁も、大きく目を見張りながら
こちらを見ていた。