(…っ……だめ…抵抗しなきゃ…。)






そう思うのに

体は全く動かず、思考もどこか
眠たいように重い。





視線をすくい取られるように
真っ直ぐと見つめられ

更に 思考を鈍らせる。




綺麗なその瞳に
吸い込まれそうな感じがする───。








「…はぁ……どんなに待ち望んだ光景か
本当に分からないよ…。」

「……。」

「会えなかった間…
何度も華のこと、思い浮かべた。」








私の上にいる彼が

不意に、切なげに目を細めて
熱っぽい視線を こちらに送る。



そして私の頬を何度も撫でながら

愛おしそうに…私を見つめる。







「ここから華を眺めていた時、
何度周りの男に嫉妬したか分からない。」

「……っ…。」

「男共が華と楽しそうに笑ったり
触れ合ってるのを見て…狂いそうだった。」







彼はそう言いながら

苦しそうに顔を歪めて



どこか泣きそうな瞳で
真っ直ぐに…私を見下ろした。






その時感じた

彼から私への強い思いに、
私は何だか…変な気持ちになる。







(どうして……そんな顔するの?)







そんな風に思うほど

どうして私を思ってくれてるの───?






もう出会ったのは十数年前で、

初恋と言ったって
こんな長い間に 気持ちなんか薄れるのが普通なのに。







「……愛してる、華。
もう絶対に…離れたくない。」

「っ---。」

「もう2度と、あんな思いはしたくない。」







そんな風に思っていると

彼からストレートに、そう告げられる。




私は彼の言葉に
思わず心臓が大きく鳴った。





私を真っ直ぐ捉えながら

徐々に近づいてくる彼の綺麗な顔に



思わず

瞳を閉じそうになる─────が。









「───吟様。」

「!」






突然聞こえた外からの声に

私達はお互いに、ピタッと動きを止めた。