「うるさい。何だ?
急に悲鳴を上げな」

先生に怒られてしまった。

だって……。

「だって……先生。幽霊が……」

「はぁっ?」

幽霊を見ていない先生は、
呆れたような表情をしていた。

私は、必死に説明した。

見たのよ!?
本物の幽霊を……。

すると女将さんが

「まぁ……そんなことが?
母や父が……心配して様子を見にきたのかしら?
私が上手く女将としてやれているのか」

切なそうに言ってきた。

女将さん……。

そうしたら睦月君が

「穏やかな感じだったから多分……様子みながら
旅行気分で来たんじゃない?
ここ旅館だし」

女将さんにそう言って伝えた。

「旅行気分ですか……フフッ……。
そうかもしれないですね」

女将さんは、嬉しそうに笑った。

何だか穏やかな雰囲気のまま
取材が終了した。

私を除いて……。

「まさか、お前らが幽霊を見るとはな。
ただボーとしていて
年寄りを間違えたのではないのか?」

幽霊を信じてくれない先生。

「本当なんですってば!!
睦月や卯月だって目撃してるのですから。
先生……今日一緒に寝て下さい」

「同じ部屋なんだから問題ないだろ?
1人で寝ろ」

「ひどーい!!」

何とも騒がしくて少しひんやりした
家族旅行になってしまったのだった。