「あっもう部活の時間だ!」


透真はそう言うと猛ダッシュで駆けていった。

時計を見ると四時を過ぎている。

そろそろ帰ろうか…。


「んじゃ、私は帰るね」


「いや、帰らせないけど?」


「えっ…」



嫌な予感がする。

キョトンとして私の目を見ている若菜の顔が怖い。

もしかして…美術部の所に行かせるのではと

思ったときには遅かった。



「よっし!宙は左腕を持って!」


人差し指をさして命令する若菜。

はいはいと呆れたように返事をする宙。

嫌だと叫んでも聞いてもらえずズルズルと

引きずられる私。




私が騒いでいるうちに部室の前。

勢いよくドアを開けてキャンバスを取りに向かった

若菜の後ろ姿は昔の私を見ているようだった…。


「懐かしい…」


ポロっと出てしまった言葉に、


「無理しなくていいから」


宙は下がった眉で笑っていた。

優しいな宙は…。

また、絵を描ける日が来るといいな。

手を胸に当て深呼吸をする。

落ち着かせてから美術室に入った。