「あの時は勝手に帰ってごめんなさい!!!」


「いや、別に怒ってないし大丈夫だけど…」



東条さんは私の前で頭を下ろし謝っていた。

本当に怒ってないし、むしろ態度が

悪かったから謝るのは私の方だ。

それより気になることが一つある。



「どうしてA組の東条さんと透真が突然B組に?」


朝のホームルームの時間、教卓の前に

笑顔の透真と東条さんが立っていた。

先生も理由は話さず仲良くな!と笑って

席を教えるだけだった。

普通は有り得ないことでクラスの皆は

美男美女が来たと叫んでいて、まともな宙でさえも

ただ、笑っていた。

私の考えがおかしいのかなと思うほどで、

ホームルームが終わったときに先生に聞いたら

後でなと言って教室を出た。


「よく分からんが俺たち三人一緒!結果オーライじゃん?」


私と宙の肩を組み笑う。

バカは深く考えないと改めて思った。


「宙だって変って思うでしょ?」



「んー、楽しくなるからいいんじゃないか?」


やっぱり今日の宙何かおかしい…。


「ねぇねぇ、利愛さん!私の事名前で呼んで?それで私の事も若菜って言って!」


「えっ…呼び捨て!?」


急に呼び捨てなんて…

隣で透真が名前も呼べないのかとバカにしてくる。


「言えるし!わっ…」



「わ?」


三人は私の事を囲んで見ている。


「わ…かな…」


すると、今でも泣きそうな顔で私に抱きついてきた。


「そうだよ!若菜だよ仲良くしようね!」



恥ずかしくて頭から火が出そう。

若菜は笑顔でこう言った。



「よろしくね!利愛!」



悪くない…。

名前で呼ばれることなんて、あまりないから

少しだけ嬉しいと思った。



「利愛にやけてる…。気持ちわりぃ…」


拳で透真のお腹を殴る。

声を出さず顔を青くして透真は倒れる。

それを見ていた宙と若菜はお腹を抱えて笑っている。



「これからもずっと一緒…」



顔を赤くして怒っている私には当然聞こえる分けがない。

どうして高校二年の夏に透真と若菜が私たちの

クラスに来たのか、これから私たちに起こる

こと。

そして、後悔するほど最悪な悲劇が待っているなんて

今の私たちには分からなかった。