「本当嬉しいな~」


「なにが?」



私の顔をじっと見つめてくる。

綺麗な顔に少しドキッとした。


「だって憧れの人とこうしてアイスを食べて帰れるんだよ?」



まるで夢みたいだよ。

東条さんは笑って空を見た。


私は、憧れと言われるほど凄くない…。



「そんなこと言われても…」


「困るとかじゃないよ」



私の言葉を遮った。

笑顔でいた東条さんの顔は真剣になっていた。



「私ね、中学二年の秋絵画コンクールで入賞したんだ。
なんで最優秀賞じゃないの?って思った。」


私は黙ってアイスを食べながら聞いた。



「でもね、利愛さんの絵を見て思ったの…。
あなたには叶わないって。」



私は耳を塞いだ。

それ以上聞きたくないと拒絶してしまう。

叶わない?

そんなこと思うはずない!



「利愛さん聞いて!!!」


私の腕を引っ張る。



「私は利愛さんの絵が好きなの!だから、また描いてほしいの!
本当は好きなくせに!何が怖いのよ!!!」


何も知らないくせに、私の絵が好きだからって?

そんなのあなたの勝手じゃない。



「東条さん、私は絵を描かないんじゃない…。描けないの」



「それでも私は必ず…必ず描いてもらうから」




なにがあっても。



小さい声で呟いて走って行った。



「えっ…」



東条さんが呟いたとき泣いていた?

はっきりとは見えなかったけど私には

泣いているように見えた。