恋人同士のクリスマス、というには甘さが足りていなかった気がするけれど、十分に満足していた。



次の日も代わり映えなく仕事をして、10時を過ぎた頃には、今から帰ります、と蒼佑くんにLINEを送った。

既読になっていたけれど、返事がないことに気にもせず、いつものように、ドアを開けると、ただいま、と声をかける前に、二足の革靴が目に飛び込んできた。






 そろりそろりとリビングの前まで来て、家主は自分だ、尻ごむ必要なんてない、と勢いよく扉を開けた瞬間、殺伐とした空気を感じて一気に青ざめた。



「おかえり……」



 小さな声で迎えてくれた蒼佑くんの向かい側には、瑞樹が胡坐をかいて憮然と座っていた。テーブルの上には、私が買った、350mlの缶ビールが何本か開けられていた。



 リビングの扉の前で立ち尽くす私に、座れば、と一言声をかけられる。

反発することもせず、おずおずと蒼佑くんの隣に座った。重い空気に抗わずに正座で姿勢を正す。




「あー…、まじか……」



 私と蒼佑くんを交互に見て、大きな溜息をつく瑞樹にまだ一言も発せられない。頭を抱える瑞樹に軽口を叩く雰囲気ではなくて、じっと様子を伺っていた。




 少しの間、誰も喋ろうともしなかったけれど、あのね、と蒼佑くんが口火を切った。



「勝手にあげてごめんね」


 申し訳なさそうに、自分の許可なく人も家にあげたことに謝られたけど、そんなことはどうでもいい。今のこの状況を分かりやすく説明してくれ、と必死に目で訴えかけた。

意図を組んでくれたのか、口を開いては閉じ、話しにくそうに瑞樹を見ていた。



「えっと、瑞樹はなんでうちに?」



 あえて空気を読まない、なんてことも今の私にならできる、はず。

そう思って口を開いたけど、わかりきってること聞くなよ、と頬杖をついてあきれていて、本当に空気の読めない女になってしまって、肩を落とした。



「……ま、蒼佑からだいたいのことは聞いたけど」



 隣に視線を移す。小さくなった彼を見て、ずいぶん体力を消耗してるな、と冷静に分析している自分がいた。



「……本当に、つき合ってんのな」


 ふ、と小さく笑みを漏らしていた。