マグカップもお揃いだしなあ、失敗したかな。

予想していた反応と違って、静かにグラスを見つめていて、不安な気持ちに駆られた。



えっと、と何か言葉を探していると、おれもある! とゴソゴソ鞄を漁っていた。

はい、と渡された包みは、二つ。細長い四角い包みを二つ、交互に見た。





「開けていい?」

「うんっ、もちろん」



 包み紙を開けるところまでまじまじと見られて、そんな見られると開けにくい、と苦笑した。



「ネックレス……と、お箸?」



 キラキラと輝くネックレスは、いつかの水族館でもらったものよりも高価そうに主張している。ブランド名を見て目を丸くした。

これは、最低でも3万はする、曲がりなりにも女性なら誰もが知っているブランドだ。自分でもそんな高価な物を買ったことはない。



あとで、プレゼントにそんなにお金をかけなくていい、と伝えなければ。けれど、今日は水を差すのはやめておこう。嬉しいのは、嘘じゃない。


ぶるぶると高価なネックレスを持つ手が震える。動揺を押し隠すように、もう一方のプレゼントを開封した。



出てきたのは、二組の、色違いのお箸。





「なんか夫婦箸っぽいね」



 しまった。アラサーの重い発言になってしまっただろうか。正直そんなに深い理由はないのだけれど。焦って蒼佑くんの顔を見ると、



「これ、百合子ちゃんちに置いといてもいい?」



 あまりにも、頬を赤らめていたから、私まで顔が赤くなる。



「グ、グラスもなんかかぶっちゃったね、食器って、ね。うん」



 恥ずかしさを紛らわそうと、茶化してみせた。けれど、こそばゆい空気からはなかなか逃れられなくて、蒼佑くん、あたしももう一個あるんだよ、とムードも台無しにしてあわあわと小さな包みを渡した。



「え、いいの?」

「うん。さすがにこれだけだと、いたたまれないよ」



 グラスをなぞりながら、開けてみて、と指を指す。その中身は何の変哲もないレザーのキーケースだったけど、ありがとう! とさっそく目の前で鍵を付け替えていて、くすぐったくなった。



「こんなに嬉しいクリスマス、初めてだ」



 目尻を下げて、優しく微笑む彼の顔を見て、嬉しさの反面、どこか浮足立つ感情には、蓋を、した。