まーくんすごいよ、あの強烈な相田さんを鎮めるなんて。さすがは彼氏なだけある。

ポリポリときゅうりを齧りながら、いちゃつく2人を眺めていた。






「お前、なんでこんなところにいんの。会社からそんな近くないだろ」



 不思議とばかりに質問を投げかけられる。



「相田さんの知ってるお店に来ただけだよ。瑞樹こそなんで?」



 まーくんは、瑞樹の会社の取引先の会社の社員さんだという。

それでつき合いがあり知り合いみたいなもので、さらには相田さんの彼氏で。

急な出張でまーくんは相田さんに会おうと打診したけれど、連絡がとれなかったから代わりに瑞樹とご飯に来た、なるほどこういうことか。





 すっかりと蚊帳の外になってしまった私は、相田さんと彼氏と二人きりにしたほうがいい、そう思って帰り支度を始めようとした、その時。



「佐伯さぁん、すみませ〜ん」

「申し訳ないです、急に邪魔してしまいまして。下咲くんも、そちらの佐伯さん、も」



 ぺこりと深く頭を下げ、場を乱してしまってすまない、と武士みたいな言葉を口にしていた。

帰り支度が見えていたのか、よければ少しみんなで飲みませんか、と申し出てきた。断るのもいかがなものか、隣に座っている瑞樹と目配せをし、せっかくだから少しだけ、とご一緒させてもらうことになった。




 それから40分ほどだろうか、1時間と経たずに会はお開きになった。



「相田さん、今日はありがとうございました」

「いえ〜、こちらこそぉ。またご飯行きましょうねぇ」

「是非、また行きましょうね。お気をつけて」




 相田さんと彼氏がタクシーに乗車したのを見送った後、さて私たちも帰りますか、と瑞樹に声をかける。

タクシーを止めようとしたけれど、通り過ぎるタクシーは乗車中のランプが点灯している車ばかりで、なかなか空車のタクシーが走ってこない。



「全然タクシー来ないね」






 困り果てていると、空車のランプが見えてきたらしく、瑞樹が手を挙げた。

 目の前にタクシーが停車すると、すぐに乗り込んだ瑞樹が「お前も乗れば」と、一緒に乗るように促した。相席に二の足を踏んでいると、



「早く。他の車の邪魔になるだろ」