そうやって、のらりくらりと話す私の能天気さに、不満を隠さず責め立てる。




「女には所詮賞味期限があるんですからぁ! 結婚にしたって出産にしたって、期限があるんです! 子供が欲しくたって、毎年毎年、私たちはできにくくなるんですよ! 悠長なことなんて言ってられないんですぅ〜」



 黙ってたら、男は何にもわからないですよ! なんて喚きながら突っ伏した。実に現実味を帯びている。ぐうの音も出ない。だって、その通りなのだから。





 相田さんは確か遠距離だったか。きっとプロポーズを待ちわびて、葛藤しているに違いない。誰かに愚痴を聞いて欲しかったのかも、と一人でうんうんと頷いていた。




「あやか?」



 微かに誰かを呼ぶ声がした。

その声は何度か聞こえた気がしたけれど、店内のどの人が発言元かわからない。



あやかさーん、呼んでますよーと他人事のように思ってお酒を口に含んだとき、目の前の人で目が留まる。肩を揺すりながら、「相田さん、もしかして呼ばれてないですか?」と付け加えた。

眠そうな目をしぱしぱさせながら、辺りを見回すと、



「まーくん!」





 がたっと勢いよく立ち上がる相田さん。

思わず、倒れそうになったテーブルの上のグラスを押さえた。

視界の片隅に見えた男性らしき人物は、相田さんを抱きしめていた。



「うわ、どこのドラマだよ……」



 まるで、誰かが私の気持ちを代弁したかのようだった。どこの誰だろう、同じくした意志を持つ同志は。



「……げ。瑞樹……」

「げって何。傷つくんですけどー」



 間延びした、その話し方。わざとらしいにも程がある。傷ついてなんか、ないくせに。

 そこまで広いわけでもない店内のど真ん中で、注目の的になっていて他のお客さんからの視線が痛い。



「すみません、なんか目立っちゃってるので、とりあえず座りませんか」







 声をかけると素直に座ってくれたけど、相田さんとまーくんとやらはすぐに二人の世界を作っていた。

 話を聞くと、まーくんは相田さんの遠距離恋愛をしているという噂の彼氏だった。普段は他県で仕事をしているけれど、急な出張で東京に出てきたという。



「それなら連絡してくれてもいいじゃないぃ〜」



 ポコポコとまーくんの胸元を叩きながら主張していた相田さんに、



「電話もメールもしたけど、あやかが全然返してくれなかったんだよ」



と、優しく諭すように宥めていた。