見覚えのあるアクセサリーだった。

肌なじみのいいピンクゴールドのイルカとボールに見立てたコットンパールの小ぶりのピアスと、水の輝きを模したシルバーの滴の中に一粒のアクアブルーがゆらゆら揺れるネックレス。

指輪もブレスレットもあまりつけないけれど、ピアスとネックレスだけはつけるんだ、と話しながら、手に取ったアクセサリーだった。



嬉しさの反面、なんの気も使わずにおめおめと帰ってきて、バツが悪い。

すぐさま電話をかけたけれど、三回目のコールで電車に乗車していることに気づいて、LINEをした。















 アウターのポケットに入れていた携帯が震えている。吊革に掴まりながら、ポケットをゴソゴソと探った。



 電話だ、——百合子ちゃんから。

生憎、電車の中ではとれそうにない。今すぐ百合子ちゃんの声が聞きたいのに、と心の中で地団太を踏む。

次の駅で降りて折り返すか、と考えていると、再度携帯が震えた。




 ピアスとネックレス、いつの間に買ってたの? びっくりした。二つともすごく可愛い。ありがとう




 ハートマーク一つなかったけれど、脳内で柔らかな百合子ちゃんの声が再生されて、先ほど別れたばかりのはずなのに、また百合子ちゃんの顔が見たくなった。



「あ、返信返信!」





 彼女はあまり携帯を見ていないらしい。



そんなに多くはないけれど、おれのつき合った歴代の彼女はみんなLINEをしたらすぐ既読がつくし、写メだってパシャパシャ撮っていた。

もはや体の一部かのように扱っていたし、返信は義務、みたくなっていたから、女の子はみんなそんなものだと思っていた。




百合子ちゃんもそうだろうと思っていたら、LINEの既読はなかなかつかないし、その上自分からあまり連絡をしてこない。

本当に、用件があるときだけしか連絡してこない。

けれど、電話をすれば長電話にもつき合ってくれるし、会おうと誘えば会ってもくれる。要は、メール不精、ということらしい。タイミングが合えばすぐ返信をくれるから、おれとしては携帯は要チェック項目だ。



「よ、かっ、た、ら、つ、け、て、ね、と……よし!」



 パッとすぐに既読がついた。




 うん。いっぱいつける。今度、代わりに何かごちそうさせてね