当日の天気予報は思っていたより暖かく、着ていくものに困りそうだ。



前日はクローゼットの中の服を引っ張り出して、一人でファッションショーをすること請け合いだな、と頭を悩ます今の自分は、クタクタのカーディガンにストライプのシャツ、デニムにシャツをインして、気持ち程度のオフィスカジュアル感を出そうと必死な格好だった。






「佐伯さぁん。お昼一緒しませんか?」



 救世主から声がかかった。恋愛スキルが高いと私の中で評判の相田さんだ。是非ともっ! と勢いよく立ち上がる。



「久しぶりですぅ、誰かとご飯行くのー」



 私、嫌われてますからね〜と明るくいわれてぎょっとしてしまう。

そんなことないですよ、とすぐ言葉にできずにいると、
「自分でわかってますから。そんな慌てなくても大丈夫ですよぉ。佐伯さん、わかりやすすぎ」と、口元をおさえて笑っていた。

全員がそう思ってるわけじゃないです! なんてド下手なフォローは完全に墓穴を掘っている。

やってしまった、と頭を抱えていると、佐伯さんは正直だから好きなんです、と弧を描く唇は嘘を言っているようには見えなかった。






 自分を偽ることなく正直に生きていて、上辺だけのおべっかを使う私とは天と地に位置しているように思える。

1か100か、イエスかノーかで生きているのに、勝手な解釈で悪者にしていたのかと思うと、まだまだ自分も青いなと思わざるを得なかった。



「相田さん、遊びに行くときってどういう服着て行ってます?」



 しれっと聞いたつもりだったけれど、すぐにデートですね! と目をキラキラさせて、顔をぐいっと近づけてくる。デートじゃない、二人で出かけるだけだと返すと、恋愛スキルの高い彼女はすぐさま察し、



「なるほどぉ! つき合ってないけど、今後そうなるかもしれない男性と二人でお出かけするってわけですね〜!」



 と、意気揚々と目を輝かせてたくさんのアイディアを考えてくれた。