蒼佑くんと同じようなことを言っている。



どっちも手放さない方法はないのかよ、弱音を吐いたのを聞いていた。



どっちも手に入れるっていうのは強欲なのかと思っていたけど、これが蒼佑くんと私のことを言っているのが、その時はまだわからなくて、しばらくしてからやっと気づいた。







 ——蒼佑くんと会えない期間に、そんなことがあったんだよ、と床でゴロゴロしながら話していた。



「瑞樹ってば。なんだよあいつ。おれのことそんなに想って……」

「きもちわる」

「ひどい! 百合子ちゃん言い方ってものがあるでしょ!」



 ふふ、と笑って軽口を叩きあう。







「蒼佑くん。別に、友達とかだったら、別に女の人の連絡先とか、消さなくて大丈夫だよ」



 この調子で、しこりもすべて取り払いたい。それで、思うところを包み隠さず話したい。

そう思って、口にしたのだけれど、ううん、と顔を横に振っていた。



「百合子ちゃんがいなくなったときじゃ遅いから。——えっと、イブのときみたいに」

「いなくなったの蒼佑くんじゃん。あたしの手、こうやって、ぺっ、てやったくせに」



 手を振り払うジェスチャーをすると、平謝りしていた。







「おれが、やっといてなんだけど。理由だけ聞いてもらっていい?」

「うん」

「百合子ちゃん、瑞樹のこと好きだって、ずっと思ってたから、なんか嫌になっちゃって」

「嫌ってすごいな」

「……嫌だけど、無理だったの。おれ、諦め悪いし」

「そもそも美由紀さんとどこまでやったの」



 いいから攻めろ、と頭の中の私が言っている。

そうだ、今ならどんなことも受け入れられる……気がしている。






「……」

「何回やったの」

「1、2回くらい」

「嘘」

「……2、3回くらいです。ごめんなさい」





「今心底気持ち悪いなって思ってる。見て、鳥肌立ってる」

「ごめんなさい。謝っても許してもらえないと思うけど」

「当然の報いだよね」

「……ごめん。でも! でもね、百合子ちゃん! ちゅーはしてない、本当に!」

「……こわい。なんの告白なの、それ」





 ぷぷ、と笑わずにはいられない。けれど、複雑な思いが滲みでる。


他の人ともうやっちゃだめ、とおでこをぺしっと叩いたら、半年前にこういう百合子ちゃんだったらしてなかったよ、と反発されて、どうにも言い返せなかった。