言葉を鵜呑みにして、その場に腰を下ろしたら、それじゃ足痛いでしょ! と布団を引っ張ってこられたついでに怒られた。



 黙って布団に正座したら、向かいに背筋を伸ばして正座する蒼佑くんが面白くて、ふふ、と笑みが漏れてしまう。

しまった、と閉め忘れた光がだだ漏れのカーテンを急いで閉める彼が可笑しくて、目で追わずにはいられない。








 再度、私の目の前にピン、と正座すると、ごそごそと鞄の中から小さい正方形の包みが出て来て、これ、と段ボールの上に置かれた。



「? 開けていいの?」



 頷くのを待ってから、包みに手をかけた。

小さなわりには、ちょっと重い。



厳重に包まれた箱の中には、ベルベットみたいな素材の四角い箱が顔を出して、それからはもう、簡単に想像がつく。



「指輪? これ、どうしたの?」



 箱の中から取り出した指輪を、恐る恐る天井に掲げてみた。

指輪は丸くて、煌々と光る照明の光が丸の中を通り抜けてまぶしい。

当たり前のことなのに、ほんのちょっぴり目が霞む。



「はめさせて」


 呆然とする私の手の中から、するりと指輪を取り出して、左手にちゅ、と唇が触れた。

ただただ見ているしかできなくて、口づけされた手の薬指に、指輪をそっとはめられた。









「あれっ? ちょっと大きい! なんで!?」



 さっきまでの厳かな雰囲気はどこ吹く風。ちゃんと測ったはずなのに、と頭を抱えて悶えていた。



「……測ったって、いつ、そんなことしてたの?」



 全然気づかなかった、と付け加えた。

去年、と小さく呟く蒼佑くんがみるみるうちに小さくなって、シュンと肩を落としていた。



「ちょっと体重減ったからかな。指も痩せるんだね」


 苦笑いで返すと、顔をあげた蒼佑くんと目が合った。


「なかなか、かっこつけるのも難しいもんなんだね……」






 百合子ちゃん、と崩れた姿勢を整えた。


「この部屋借りたんだ」

「? 一人暮らし、始めるの?」

















「結婚して」



 え? と思わず聞き返す。しまった、と口元を抑えて、間違った、と口にした。








「ここで、一緒に棲んでほしい。それで、その……よかったら、だめじゃなかったら結婚して、ください」



 お願いします、と改まって頭を下げる蒼佑くんが、こんなにも近くにいるのに見えない。