だからほら、とチェーンに通したリングを胸元から取り出して見せた。なるほどな、と指輪を転がして、いろんな角度からじろじろともの珍しそうに見ていた。



「あいつ、つけてんじゃね、今日」



 小指をぷらぷらとあげる瑞樹に、さすがに職場にはつけていかないでしょ、とその指を折った。

 そういえば、とお菓子を取り出して封をあけようとした。口が堅くてなかなか開かずにまごつくのを見かねて、ひょいとかわりにお菓子の封を開けてくれた。



「ありがと」

「ん」



 二人でお菓子をつまみながら、で、と口を開く。



「瑞樹、恵美と知り合いなの? 倉橋恵美」



 友達? と、ぽりぽりお菓子を頬張る。

そうしたら、手が止まったのが見えて、瑞樹? と顔を覗いた。



「や、友達っつうか……何、百合子、お前知ってんのか」



 そんな友達いたか、と質問返しされて、友達といえば友達、と話した。

自分の勤める会社がある、同じビルに入っている違う会社の人だと説明した。ふーんと、聞いてきたのはそっちなのに、興味がなさそうな反応をされた。



「なんで、そんなこと聞くんだよ」



 窓の外を見ながら話す瑞樹に、だって、とさらに説明を付け加えた。




 もともと顔だけは知っている、顔見知り、みたいな関係だったか、偶然同じお店でランチをしていたら、声をかけてくれて、そこからつき合いが始まった。

同じビルに通うだけあって、一度話してみたらすぐに仲良くなれて。何回も飲みに行ったんだよ、と話した。




「最近あんまり会えてなかったんだけど、この前久しぶりに飲みに行ったんだよ。そしたらそのとき、下咲くんて知ってる、って言われた。あ、蒼佑くんも知ってると思うよ。恵美のいとこが、蒼佑くんの大学の友達だって」



 話し終えると、指をせわしなく動かしていた。太腿の上で、一見リズミカルにピアノを弾くみたいに、指をまばらに動かす。

瑞樹が考え事をするときに出る、癖みたいなものだった。



「なに、なんか恵美とあるの?」



 付き合うんならそれはそれで、とニヤニヤ口元を抑えた。続けて美人だし、お似合いかもね、と冷やかすと、



「絶対ねえから」



 まじでやめろ、と低い声で突っぱねられて、心底うんざりした顔をしていた。