新幹線に乗るために駅に向かうと、遠くからでもわかる、背の高い瑞樹が見えた。瑞樹も私に気付いたようで、よ、と小さく手を挙げた。
「やっぱ同じ時間だったか」
「だろうな。これ逃したら接続すげぇ待つし」
「だよね」
一応、瑞樹と同じ新幹線だった、てLINEしておこうかな、とスマホを出した。
「俺も送ってやろ」
と、ピロン、と何か写メを撮って送っていたみたいだった。
いざ新幹線に乗り込むと、瑞樹がずっと傍にいて、なんでついてくんの、と振り向くと俺もこっちだし、と隣の席に腰かける。
「こんなことってある……?」
あたりを見回すと、週末帰る人なのか、出張に向かう人なのか、意外と車内は混んでいて、素直に自分も指定席に腰かけた。
「あれ、瑞樹通路側か」
「空いてなかったんだよ」
「あ、じゃあこっち乗れば? 座席、交換しようよ」
いいでしょ、と無理やり窓際に押し込んだ。
瑞樹は意外と乗り物に弱い。
長時間車に乗るなんてとんでもない、と言っていたし、電車もあまり好きじゃないと言っていた。酔わないのは、自分が運転している間の車の中だけで、修学旅行のときは、飛行機もフェリーも、乗るもの全部に嫌悪感を示していた。
挙句の果てには、嘔吐して、もう帰りたいと伏せていたのを思い出す。それも大人になったら、経過は良好になってきたようだ。
「わり」と、一言、窓際に座る。
「蒼佑と上手くやってっか」
「おかげさまでね」
「ふーん」
「先週温泉行ったよ」
「どこ? 箱根?」
「うん」
「ベタかよ」
「いいじゃん」
ぽこぽこと言葉が出てくる。
早めの誕生日のお祝いをしてもらったことや、すごく綺麗な温泉宿に連れて行ってもらったこと、……プレゼントに、リングを、もらったこと。
「なに、指輪もらったのかよ」
「ん」
つけてないじゃん、と左手を覗き見る。
「婚約指輪じゃないんだから」
「そうなん?」
「えーっと、あれ、小指にはめるやつ」
「ピンキーリング?」
「ああ! それそれ! ピンキーリング」
つけないと意味なくね? とペットボトルの蓋をいじっていた。
「あたしもともと指輪つける人じゃないじゃん」
「ま、そうよな」

