半身だけ剥き出しになった彼に、熱っぽく見下ろされる。
王子様と呼ばれる、彼のこんな表情。

触れられるのは、今世界で私しかいない。





「してよ、嫉妬も束縛も。正しくなくてもいいからさ。」

『束縛も?嫌じゃないの?』

「澪なら嫌じゃない。」

『束縛は、したことないから分かんないかも・・・嫉妬も、加減が上手に出来なそうっていうか・・・
好きって、どう表現したらいいのか難しい。』


近づいてくる唇に、私は嫌でも息が上がる。こんな反応、彼にしか起こせないと思う。


「へぇ。」


クッと持ち上がった口角。それだけで身体が疼く。

こんな反応、これからも彼にしか起きないと思う。














「こうするんだよ。」













あっという間に、それは始まる。

感情なんて、不確かで脆くて頼りない。
だけど、同じ瞬間に同じ体感を確かめたくて、ひたすらに距離を縮める。



不安だから、感じられるものだけが真実だから。

何もかも逃さず感じたくて、私は必死で彼についていく。


快楽がみんな、こんなにも痛みに似てるなら。

岩田さんからしか、欲しくない。








『・・・待ってっ、』


唯一自由だった手の平も、指と指を絡ませた深い繋ぎで取り上げられる。


「顔見せて。」


彼はきっと知っている。

どの言葉が、私を煽って開かせるのか。







声にならない声を、溢さず岩田さんが飲み込んでいく。
私を呼ぶ声は掠れていて、それなのに繰り返す優しさに涙が出る。


「澪。」

岩田さんに呼ばれる名前が、一番好き。






濡れた背中に手を回す。

より一層上がるスピードから、振り落とされないように。

愛情は、抱き合えば肌でちゃんと感じられる。






遠く遠く堕ちていく夜。




いっそのこと、私の何もかも征服してくれたらいいのに。



征服されてしまいたいなんて願う、この恋心が。

何よりもの、束縛かもしれないのに。