『説明してね。』


「悠生から聞いてねぇのか。」



壁へと凭れて俺を見る。



『いや、サチから聞けってさ。』



勿論そんな事は言ってないけど。



「あとでシメる。倍だ。」



サチの眉間の皺が深くなった気がした。



『手伝うことがあったら言ってね。それで?』


「はぁ…、FEELに行った。入り口は壊されてた。倒れてたのは…確か5人くらいか?それで〝無〟を見ようと近づくとあの女を見つけた。」


『ちょっと待て。近づいた?しかも倒れてた奴を…連れてきた?』


「あぁ。」



平然と答えるこの男を1発殴りたい。でもそんなことしたら返り討ちにされるのがオチだ。俺は拳を作り震えている右手を左手で押さえた。



『そ、れで…あの子は誰?』


「俺が見たかった、〝無〟だ。」



…やっぱ殴ろうかな。


返り討ちにされると分かってても殴られたら少しは自分の過ちに気付くかもしれない。