野良side



目の前にはじっと綺羅だけを先程から目で追っている女。



名前はむぅというらしい。
顔はまぁ、美人だな。
俺のタイプっちゃタイプだ。


でもそこまで。
あの皇龍会の総長の女(俺はそうみている)で、総長の親衛隊長のこの女に手を出そうと思う奴は少なくともこの中にはいないだろう。



「むぅちゃん、ジュースいる?」


「あ、大丈夫です。ありがとうございます。」



歩の言葉に軽く頭の下げて答えるとまた綺羅を見つめる。


歩と俺の視線が交わった。するとどんどんこちらに向かってくる。
なんで?嫌な予感しかしないんだけど。



「なぁ、野良ちゃんっ!」


『それって、俺を揶揄う時の呼び方ですよね?』


「むぅちゃんってお前のタイプど真ん中やんなっ!惚れた?なぁなぁ惚れた?」


『恋愛感情はありませんよ。…顔近いです。離れてください。暑苦しい…。』


「はぁ、なーんだ。綺羅と野良と皇龍会の総長さんの三角関係見たかったのにぃ。」


『それ、まず俺が勝ち目ないのが分かっちゃいますね。』


「そぉーんなことないでしょー。楽しそう。」


『人を楽しそうっていう理由なだけで炎の中に投げ入れようとしないで下さい。』