†皇帝-emperor-†《Ⅰ》




あの不思議な感情のせいで彼の返事も待たずに、洗濯機に向かって元来た道を駆け出した私。


洗面所に着くと乾燥まで終わったらしい服と下着を身に付け彼に借りた服を代わりに洗い始めた。


駆け出したはいいけど、挨拶くらいして帰るのが礼儀だと思い直し、彼のもとへ戻った。



「……あの、帰るね?服とか看病とか本当に色々ありがとうね」



『……ああ、』



何故か琥珀が若干、寂しそうに見えるのは気のせいだよね?



「……そ、それじゃー。お邪魔しました」


私は玄関を目指した。


廊下を一直線に進んでいくと本当にマンションなのかと疑いたくなるほど大きな玄関へと出た。


(……この部屋、自体どの部屋も広いけど。)



そんなことを考えていると、ガチャリと玄関の扉が音を立てた。