——…廊下に出ると、いい匂いが鼻をかすめた。その匂いに誘われるかのように私は廊下の突き当たりにある部屋へと入って行った。
——ガチャッ
ドアをくぐると、そこで私を待ち受けていたのはフライパンを片手に料理をしている彼の後ろ姿だった。
その後ろ姿に、
「あの…お風呂ありがとう」
と言葉をかけた。
私のかけた言葉に反応した彼は、こちらに向き直り私を視界に捉える。
『上がったのか。……おまッ、』
とまたしても顔を赤くした。
一体、どうしたんだろうと不思議がりながら彼の視線の先を追うと、
「……あ!!勝手に借りてごめんなさい。あの、……服が乾くまで借りても良い?」
『……っ、——ああ』
右手を口元にあてがい未だに顔が赤い彼。
その仕草が彼の照れた時の癖なんだと知った。
