ひとまず今の体温を測ることにして、様子を見てみるかと体温計を脇に挟ませると――39.3℃というのが体温計が示した数値だった。どうやら、外からだけじゃダメみたいだ。


あれから2時間ほどたった今、女は——……



額には熱さまシート。


頭の下には枕の代わりに氷枕。


といった風に外から熱を冷やし続けたはずなのに一向に下がる気配がなかった。


俺は、外から熱を冷ますのを諦め女に向き直り、



『……薬、どうしても飲めねーか?』



と問いた。


が、女は先ほどと同様に首を横に振った。


俺は、どうしてここまで薬を飲むのを女が拒むのかを理解できなかった。だから、



『……どうして、嫌なんだ?』



と疑問をぶつけてみた。


すると、女は、



「……の、んだ事…なぃから……怖ぃ。」



と少し掠れた小さな声でつぶやいた。


ああ、経験したことないことほど怖いものは無いよな。


俺は女の答えに納得した。


だが、飲まない事には埒が明かない。ってのも本当で、



俺は、一つの打開策を思いついた。



だけど、今からする事は女にとって恐怖以外の何モノでもないかもしれないな。と罪悪感が芽生えた。



『……悪い。文句あんなら、治った時に聞くから』



女の返事も聞かずに俺は薬と水を口に含み、そっと女に口付けた。