それは一瞬の出来事だった。


突然、女の体がベッドの上で倒れた。何事かと俺は女の方へ近づいた。



『…おい、どうした!?』



俺の問いに応えられる状態じゃないのか、女は苦しそうに視線だけを俺へと移す。


顔がひどく火照っていた。俺はそこで思い至り、


俺は、女の額に手を当てた。



『……ッ!!』



やはり女は発熱していて、結構な高熱のようだった。



部屋を飛び出した俺は洗面所に投げ出すように置いていた携帯をすかさず手にして電話をかける。


何度目かのコールで相手が出た。



「…もしもし。琥珀?」


『あぁ…今、いいか?』


「うん。…いいよ」


『悪いが…発熱に効く薬持ってきてくれないか?類(るい)』



俺が、電話をかけたのは家が病院をやってる宇佐美 類(うさみ るい)だった。


類は皇帝幹部兼情報係と言ったところだろうか。



「いいけど…琥珀、熱でもあるの?」


『…俺じゃ、ねーよ』



…こいつは、昔から察しがいい。



「……分かった。すぐ行くから」



ほらな。


俺の言葉が足りない会話にも着いてこれる数少ない理解者だ。