……ンッ……う~ん。
静寂に包まれた部屋の中に木霊するのは女の甘い吐息。
正直、グッスリと眠っている女を見て羨ましかった。俺は眠りたくても眠れない。
全くって訳ではないから不眠症というほどではない。と、自分では思っていたが”中途覚醒≪ちゅうとかくせい≫”というらしい。
平均睡眠時間は2時間半位だろうか。それもうたた寝程度のものを何度も繰り返すようなモノだった。
普通、睡眠は身体を休める事で安楽を得るものだろうが俺にとっての睡眠は、苦以外のなにモノでもない。
極まれにだが余りにも、俺が不規則な睡眠をとってると右京は俺に最終手段として、睡眠薬を飲ませることもあった。
そんな俺からしたら、きちんと規則正しい吐息を漏らしながら眠る女を俺は凄いとすら思った。
きっと、俺の感覚は他とは少しズレているだろうがこれが俺の率直な感想だった。
——…女の甘い声を背にドアの方へとシャワーでも浴びようと歩みを始めたところで、
「…ぃ………で、ぃ…な…ぃ…」
ここに来て初めて女は口を開いた。
意識はなかったけど。
俺は女が何かを訴えかけているかの様に聴こえた。だから俺は女が何を言ったのか確かめる為に女の方へ近づいていった。
女は言った。
「”…いかないで”」と。
