一瞬、訳が分からず固まった俺だけど、次の瞬間には携帯を手にしてかけ始めた。



——プルル



『…はい』


「あ…琥珀?俺だけど」


『…分かってる。何があった?』


「ああ、実は今。猫拾ったんだけど…迎えに来てくんね?」



きっと普通なら、電話の向こうの相手は困惑するだろうがこいつは、



『分かった。…場所は?』



ほらな。いきなりこんなことを言われても動じない奴だ。



「んじゃ、頼んだぞ?」



俺は琥珀に場所を告げ通話を終えた。



琥珀——松雪琥珀(まつゆき こはく)は関東一体を牛耳っている皇帝と呼ばれる組織の頂点に君臨する男。


そんな琥珀を筆頭に俺、鹿月右京(かつき うきょう)、他5名は幹部として組織を率いている。


琥珀は、よく言えばクールだが悪く言えば何事にも無関心。唯一、幹部の俺らには心を開いている程度。


感情をあまり表に出さない琥珀。


あいつから感情が失われたのはいつからだろうか、あいつが笑わなくなったのは。


だから俺は探している、いつの日かあいつが心から惹かれ大切にしたいと思う女を。



そんな奴は居ないのかもしれない。



心のどこかでは俺だってそう思わなくもない、それでも1%でも可能性があるのなら俺はその1%に賭けてみたい。


だから俺はこんな風に何度も琥珀に女の子を送り込む。


女の子には悪いことをしてる事は重々、承知している。もちろん、俺が送り込まなくても琥珀は女にモテる。自分に自信のある女の子は琥珀に取り入ろうとするけど琥珀は彼女たちに本気にならない。