†皇帝-emperor-†《Ⅰ》




聞き間違いかと思ったけど、どうやら”逃げていた”らしい琥珀。


何か怒らせるような事でもしたのかな?


まぁ、いいけど。


私の中では自分で聞いておいて何だけど琥珀の少々事情が窺えない状況に勝手に納得していた。



”ところで”って言葉を繋げた琥珀は私を抱きしめるような体制のまま。



『……瑠璃。お前は何でココにいるんだ?』



琥珀の言葉に首を傾げながら、やや斜め上の琥珀の顔を見ようとしたら琥珀の手によって妨げられた。


それにしても、ココって?


ん?アレ何か、琥珀顔が赤くない?



「……えっと、中庭にってこと?」


『……いや。まぁ、いい』



何か言いかけたもののそのまま琥珀に私はプイっと顔を背けられてしまった。


私なんか、琥珀にしたかな?


何か、軽く泣けそう。


私に視線を落としたらしい、琥珀が声を上げて驚いた。



『お、…おい!!どうした?瑠璃』



な、何?なんで、琥珀が驚いてるの?


琥珀はさっきまでの体制からいきなり私と向き直るように私の正面に回り込んだ。



そして、腰を少し屈め私との身長差を縮めた。


私と琥珀の目の位置が重なりかけた。


えっと?



『……瑠璃』



私の名を呼ぶ、優しい声色のハスキーボイスが落とされた。



「……な、何?」


『……お前、なんで泣いてる?』



私はその時、始めて自分が泣いてることに気が付いた。



ホントだ。何で、私……泣いてるの?