10月も半ば、涼しくなりつつある朝の匂い、秋めく空にどこか寂しさや切なさを感じる頃。
高校2年生の早苗は、目も眩みそうな夕焼け空を睨み付けるように見上げながら
待ち合わせ場所まで早足に歩く。肩まで伸ばしたストレートの黒髪、こぼれ落ちそうなくらい大きな瞳、透き通る肌、華奢な体。
非の打ち所のない完璧な容姿。
成績も優秀で、常に学年5位以内をキープ。志望校の国立大学は常にA判定。
綺麗ね、優秀ね、将来が楽しみね
周りからはそんな風に言われてきた。
良い子、
そんな風に周囲から認識されなければならないと必死に自分を作り続けた。

「早苗さん?」

早苗は振り返りながら小さく頭を下げた。

もう良い子ちゃんでは無くなる。