この手の中だったら…傷付かずに済むのかな…?
もう…辛い思いもしなくていいのかな…?
でも、私が先生を好きな事実は変わらない。
このまま甘えたら、私の中途半端な気持ちで圭太を傷付けてしまう。
やっぱり、そんな事…できないよ。
今まで色々言ってきたけど、それでも大切に思ってた。
家族みたいな感覚だった。
〝幼なじみ〟として、大好きだった。
「…ごめん…」
小さな声で呟く。
「圭太の事は、好き…だけど…私は先生が…っ」
『先生が好き』
そう言いかけた時、圭太の腕に抱き寄せられた。
力強いけど、優しく。壊れないように。
「今はそれでもいいって。」
「…でもっ…」
「お前が俺だけを見てくれるように頑張るから。」
圭太の息遣いが、すぐ側に感じる。
私を抱きしめる腕が、少しだけ震えていた。
「…絶対、大事にする。」
もう、十分大事にしてもらってるよ。
でも、圭太ならきっと、今以上に大切にしてくれるんだろうな。
今は先生の事でいっぱいのこの想いも、
上から白く塗り潰せば、また1からやり直せるの…?
忘れる事ができる…かな?
もう…疲れたよ…
先生の事を想うのも、色々と考える事も。
私は顔を上げ、圭太を見つめながら言った。
「…よろしく、お願い…します。」
私の目には、嬉しそうに微笑む圭太が写っていた。

