だって、先生があーちゃんに向ける笑顔は、どこか他の人とは違う気がするから。
あーちゃんは、先生は頭を撫でるのが癖だって言ってた。
でも、他の生徒の頭を撫でている所なんて見た事ない。
だから、なんだか胸騒ぎがするんだ。
「先生は、あーちゃんの事どう思ってるんですか…?」
思わずそう口走ってしまった。
「あーちゃん?」
先生は突然の質問に不思議そうな顔をする。
やだ…自分で聞いたけど、気になるけど、聞きたくない…!
「ああ、碧か!」
「あーちゃんだけ、名前呼びですよね。」
こんな事が聞きたいんじゃない。
どうせなら好きな食べ物は何ですか、とか
彼女はいるんですか、とか。
そう言う事が聞きたいのに…!
「アイツは、何か放っておけないんだよね。」
「え…?」
「初めて会った時もそうだったけど…不器用で、危なっかしくて。」
「……」
「少しでも目離したら…いなくなりそう。」
「……怖い、ですか?」
「ん?」
「あーちゃんがいなくなる事。」
その質問に、少しだけ目を見開いて黙り込む。
「……」
「あーちゃんの事、好きですか?」
「……オレは、生徒皆が好きだよ。特別扱いはしない。」
嘘だ。声が少し震えてるもん。
好きな人の好きな人は分かっちゃうってよく聞くけど…こう言う事なんだな。
「…そうですよね!変な事聞いてごめんなさい!」
私の言葉に、先生はホッとした顔をする。
私の家に着いたらしく、車をゆっくりと停めた。
「…生徒皆って、私も入ってますか?」
「もちろん!」
先生は私の方を向いて優しく微笑んでくれる。
私は、そんな先生に聞こえるか聞こえないか程の声で呟いた。
「今は…それで十分です。」
「え?」
「……送ってくれて、ありがとうございました!」
私は、精一杯の笑顔でそう言った。