どうして皆騒いでるんだろう…?


「どうしたの?」


近くにいたクラスメートに尋ねると、校庭を指して教えてくれた。


「紗那が動かなくなっちゃったの。」


「え…!?」


その言葉に、慌てて校庭見る。


すると、紗那はお題の紙を見つめたまま立ち尽くしていた。


紗那…!どうしちゃったの!


他のクラスメート達は「早くー!」などと野次を飛ばしている。


私は我慢できなくなって、紗那の元へ走って行った。


「どうしたの!?」


紗那の顔を覗き込んで、驚いてしまう。


だって、泣いていたから。


ポロポロと涙を落としながら紙を見つめていたのだ。


「本当にどうしたの!どこかケガした!?」


私がそう尋ねるが、紗那はフルフルと首を横に振る。


ふと、紗那が手に持っているお題を見てしまった。


そこに書いてあったのは…『好きな人』。


そっか、好きな人がいないから困っちゃったんだ。


「紗那、大丈夫だから!私と一緒に走って!」


私は紗那の手を取って走り出す。


前を見ると、次々と他のチームがゴールしていた。


全速力でゴールを目指す。


紗那は、手を引かれるままに走っている、と言う感じだった。


『松坂さん、お友達に手を引かれながらゴールです!さて、そのお題は!?』


やたらとテンションの高い実況に、お題の紙を突きつける。


「これ〝異性の〟なんてどこにも書いてないから、私でもOKでしょ!?」


私がすごい剣幕でそう訴えると、実況は押されたのか『あ、はい…』と言った。


『松坂さんのお題は好きな人!!いやあ、〝仲よき事は美しきかな〟ですね!!』


実況は引きつった笑いで会場に伝えた。