「何しに来たのよ?」
教室に入って来た圭太に問いかける。
「もう、またそんな言い方する…」
紗那はそう言って呆れていた。
圭太の言う事には、「汗がやべえから着替えに来た」らしい。
「う〜、汗でベトベトする…」
そしておもむろに服を脱ぎ始める。
それを見ていた紗那が、「キャッ」と悲鳴をあげて目隠しした。
「ちょ、ちょっと!紗那にたるんだお腹見せないでよ!」
「な!たるんだってなんだよー!一応鍛えてるんですけど!?」
「女子の前で脱ぐなって言ってるの!」
私のその言葉でようやく理解したのか、圭太は慌てて服を来た。
「ごめんごめん。いつものクセでつい…」
「私がいるからって、家だと思わないでよね。」
圭太は「紗那ちゃんごめんね」と言うと、急いで教室を出て行った。
全く…アイツ、どれだけデリカシーないの!
「あーちゃん、男の子の着替え見ても平気なの?」
「んー…圭太のは小さい頃から見てるからね。」
私がそう言うと、納得したように「ああ…」と呟いた。
ふと窓の外に目をやると、私達のクラスが準備している所が見えた。
隣で紗那も窓の外を見ている。
「…私達も手伝いに行こうよ!」
「え〜…暑いよ?」
「皆暑いの!ほら、行こ!」
紗那にグイグイと手を引っ張られて、渋々歩き出す。
そう言えば…
「圭太が来る前に何か言いかけてなかった?先生がどうとか…」
「え?ああ…もういいの!」
「そう?」
「もういい」と言った紗那の顔は、後ろにいる私には見えなかった。

