「痛い…っ」


保健室に着いて、消毒をしてもらう。


「もう、どうやったらこんなに傷ができるの?」


保健室の先生、藤子ちゃんが不思議そうに聞いてくる。


「あはは…」


さすがに『裁縫をしていて針を刺しまくりました』とは言えなかった。


「ありがとうございました〜。」


絆創膏を貼り終え、保健室を後にする。


また教室へ戻ろうと歩き出した時、背後から聞き覚えのある声がした。


「おーい、そこの女子!危ないからどいててなー。」


後ろを振り向くと、大きな荷物を抱えた男の人が歩いてくる。


「その声…先生?」


私の問いかけに、唯斗先生が荷物からひょっこり顔を出した。


「なんだ、碧か!サボってんの?」


私を見ると、歩くのをやめてニヤニヤと話しかけてきた。


始業式の日から、先生とは大分仲良くなったと思う。


もちろん、仲良くなったのは私だけじゃないけれど。


「サボってないよ!保健室行ってたの!」


「保健室?ケガしたのか?」


「ちょっと…ね」


私が苦笑いをすると、先生は「ふーん」と言った。


ふーんって…全然興味ないのね…


って、なんで私少し落ち込んでるのよ!


先生なんてどうでもいいのに。


「そ、そう言う先生は何してるの!」


「ふつーに荷物運んでる。」


う…そりゃそうだ。


「少しぐらいなら…手伝ってあげてもいいけど?」


私がそう言うと、先生はブハッと吹き出した。


「なんだよそれ。ツンデレか!」


先生は私の頭をグシャグシャと撫でた。


ちょ、髪の毛が崩れる…!


朝は30分かけてブローしてるのに!


そう思っているのに、何故か全然イヤじゃない。


それどころか、少し嬉しい…なんて。


そんな事を考えている自分に、顔が赤くなってしまう。


「ちょっと先生!女子の髪の毛くしゃくしゃにしないでよ!」


私は顔が赤いのがバレたくなくて、先生の手を払い退けた。


「あはは、悪い悪い。」


先生はそんな事に気付く様子もなく、呑気に笑っていた。