「もう十分お礼は聞いたよ。あんまり気にしてないみたいでよかった。」


「何か、自分でもびっくりで。私おかしいですよね。」


普通はもっとトラウマとかになるよね…。


「落ち込むよりはいいだろ。」


「そう…ですね!」


2人でニコニコと話していたら、クラス写真を撮る桜の下まで来たみたいだ。


「ホントにきれーい…」


学校の中で一番大きい桜の木も満開で、どの桜よりもキレイだった。


「オレ、花の中で桜が一番好き。」


先生は、つぶやくようにそう言った。


なぜか私は、先生の秘密を知れた、そんなような気分になった。


「お前、名前なんて言うの?」


「え、私?」


急に名前を聞かれて驚いたので、聞き返してしまった。


「他に誰がいるんだよ。」


先生はまた無邪気に笑う。


「山本…碧です。」


「碧ね。オッケー!」


もう何回見たか分からない先生の笑顔は、出会った時から眩しかった。