祐二は、そんな幸せそうな駆を見てきただけに、『諦める発言』に、納得がいかなかった。

聞けば、駆は、振られた訳じゃない。

さらに聞けば、告白すらしていない。

____じゃあ、何で!?

駆は頑なに、理由を教えてはくれなかった。

そして、それから美空の名を口にしなかった。

____訳わからん。どうしてだよ、駆。

今一度、心で問いかけても、駆が答えるはずもない。




「おい!鷹野!ぼさっとしてんなよ!」



古典の男性教師に名指しされ、祐二はびくりと肩を揺らす。

「スイマセン」

今が授業中であったことを思い出しながら、口だけの謝罪をする。

朝からぼんやりしている駆が注意されないことに、微妙に納得がいかない。

だが、普段からおしゃべりな自分が黙って考え事をしていたら、確かに不自然だな、と、納得もする。

「まったく……そんなんで、次のテスト大丈夫か?」

「もとから大丈夫じゃないんで、大丈夫っすよ」

祐二の言葉に、教室の生徒がどっと笑う。

「大丈夫じゃねぇじゃん!」なんてツッコミも聞こえたが、駆だけは、相変わらず虚空を見つめていた。

そんな親友を横目に、祐二は、貼り付けたような笑みを浮かべるしかできなかった。