____大丈夫かよ、アイツ。


駆の親友である鷹野 祐二は、心の中でぼやいた。

朝、いつものように挨拶をしても、緊急の全校集会のあとも、駆は上の空だった。

背中を叩いてみても、気だるげな目を向けながら「あぁ……」と返すだけだ。


祐二は、ぼんやりと黒板を見る駆を横目で見ながら、唇を噛む。

____まぁ、そりゃ、凹むよな。
____好きな女子が、事故で意識不明なんて聞いたら。

そう思いながらも、祐二は決して、それを口には出さない。

口に出したら、駆が、必ず食って掛かるのが解っていた。


「好きな女子じゃねぇ!もう、アイツのことは諦めてんだよ!友達として見てる!」と。



そう。駆は、美空に惚れていた。

祐二は親友として、何かと恋愛相談の相手をさせられたものだった。

また、駆の片思いを知る、唯一の人物でもあった。

が。

当の駆は、夏休み明けの二学期最初の日、「美空はもう諦めた」と言い出した。


____なっさけねぇ。



祐二は、不満だった。

惚れた女をやすやすと諦める駆が、気に食わなかった。