『もし、ネガイが叶うとしたら、何をネガウ?』


目の前にたった一人、男の子がいた。
私と同じ年くらいだろうか?


.......ネガイ?


目の前の男の子は、空中に浮き私を見つめる。
そんな、非常識な事、信じられるわけないだろう、いつもならば、そう、いつも通りだったなら。



目の前はもう、真っ暗。
私が住んでいた家も街も全て壊されなくなった。
人も一人いない。


私の唯一の肉親である兄もこの世にはいない。


それで、私に何をノゾメと言うの?



どうして?........どうして、私だけが生き残ったの?どうして、私に聞くの?



私が何をしたって言うの?


男の子はただ私を見つめて問うだけ、何度話しかけても何も答えない。


「....私がノゾメば、何でも.......叶えてくれるの?」


『ハイ。』


そう言うと、男の子は地面に立ち、私の前寄ってくる。


『ノゾミを。そうすれば、ネガイは叶う。』



「じゃあ........兄を....あやとを生き返らせて!!!」


そう叫ぶと男の子は目を閉じ、呟く。


『ネガイをプログラム化.......6%........27%.......54%....70........80.......100%。完了。遂行。』


眩しい光りに包まれ、光りがおさまった時、目を開けるとそこには、


<....だ...ず........げで.......いたい、いたいいたいいたいたいイタイイタイイタイ!?!>


ボロボロな兄の姿が。

たくさんのキズが残ったまま。
まるで、ゾンビの様に立っていた。


「いやっ。だれ?....あや...と?」



呆然と眺める事しか出来ない。
キズだらけの兄を助ける方法それは、ネガウこと。
しかし、混乱した頭ではネガウことすら出来ない。






『次のネガイを。』



男の子はただ、私を見つめてまた、言う。
あと、あといくつネガイを叶えればいい?
あといくつでこの地獄の様な現実からぬけだせる?


もう、精神的にきつい状態だった。



もはや、目の前にいる兄はただの化け物にしか見えなくなってしまった。


そして、ネガウ。


あの化け物を消して........と。



『ネガイをプログラム化......................100%、完了。遂行。』


そして、また光りに包まれ、目を開けた先には何もいない。
最初から居なかったかの様に何一つ残っていない。


「はぁ........はぁ.....。」


深呼吸をして、落ち着かせる。
頭では分かっていても身体は言うことを聞かない。



やっと落ち着いた頃に気づく、自分の過ち。
自分が兄を消してしまった事を。



もう、戻らない。
兄は戻ってこない。
自分が消したのだと。
自分への憎悪が心の中で暴れ、自分が見えなくなる。


『マスターの状態が危険!制御システム可動。これより、原因を削除。』



男の子はそう言って両手で私の頭を覆った。


『削除対象を発見。これより、削除開始。』



急に頭に痛みが走ったと思えば、身体がだるくなる。
倒れ混む私を支える男の子。


『削除完了。』


「あれ?.......私は何をしてたんだろ?」


『マスター。』


男の子は私の手を握った。


「マスター?」



さっきまでの記憶がなく、混乱しているなか男の子が私をマスターと呼ぶ。


『ハイ。マスターと認識。登録を開始。ナマエを。』


「名前?私は.....彩...佳。澄咲 彩佳(すみざき あやか)。」


『アヤカ。認識、登録完了。』


「えっ?登録?認識?どういう.......。」


『今日からアヤカがオレのパートナーってことだ。』


「ちょっ!?ちょっとまって?!パートナーってなに?それに、さっきより、大きくなってない?!!?口調も全然違う?!」


そう、目の前の男の子はさっきより大きくなっている。
様は、さっきより、大人に見える。
男の子ではなく、男の人になったのだ。
口調も俺様口調になっている。