「長田さん」
「なんでしょう?」
呼ばれた声にかしこまった返事をすると、笑って「面白い人」と言われた。
よく分からないけど、取り敢えず首を傾げて笑う。
今度はため息混じりに息をつき、首を短く振ってから言った。
「告白、してもいいんじゃないの?」
「えっ」
「てか、許すとかそんなの関係ないじゃん?だってあたし振られてる身だし。フリーだし」
立ち上がった桃田さんを見上げた。
背伸びをしている姿を目にしていると、振り向いて私に手を差し伸べた。
不思議に思いつつその手を取って私も立ち上がった。
今度は桃田さんが私を見上げる形になる。
可愛い顔で普通に上目遣いをするから、どきっとした。
これを男の子にやっていると思うと、彼女は殺人級だ。
みんなが虜になってしまう。
特に、単純な男の子は。
それに、香奈恵ちゃんはこうやって私を見下ろしているのかと思うと羨ましいと思った。
生まれ変わったら、背が高い女の子になりたいな……。
あと6cmほしい!
「で、いつするの?」
「……いつ、って?」
「時期!告白する日!」
なに言わせるの!?とでも言うような顔を向ける彼女に、顔を熱くさせた。
桃田さん、ここ一応廊下なんだから。
そんな大きな声で言わないでほしい……。
ぐわんぐわん響く桃田さんの言葉に焦った。
時間帯的には誰も来ないと思うけど、聞かれてたら終わったも同然だ。
とにかく、今はキミがいないことを願った。



